好きなもの

数学の講義を聞くのが好きだ。
数学の本を読むのが好きだ。
じゃあ、数学それ自体は?


この問いに、明確に答えられない気がする。自分が楽しいと思うのは、分からないものを考えて分かるという瞬間であり、分からないことへの対処法を見つけ出すことなんだと思う。
だとすると、自分が数学を好きだというのは、たまたま数学との相性が他のものと比べて良くて、数学の中の分からないものが多少は分かるということのみによっていて、数学が数学であるから好きなわけではないということになる。
どうでも良いことに見えるかもしれないけれど、自分ではわりと重要なことだと思っている。数学が数学であるから好きということが、そのまま数学のどれそれが美しい、というような感想を持つための要因となっているのだと思う。
数学が数学であることが好きになれなければ、研究なんてやっていけないんじゃないだろうかと不安になる。
書いてあること言っていることが分かるうちはとても楽しいのに、少し引っかかりが出来た途端にうろたえて、考えても考えても分からないという状態を容認できずに諦めてしまうから、そこから先に進めなくなる。


進学の選択は間違っていたのかななんて、ほぼ進路の決まった状態で気付いてもどうしようもないし、よくよく自分と向き合ってみれば、ただ数学の研究がしたいからだけではなくて、学生というモラトリアム期間が延長されることを望んでいた節もあるし、今から進学するのをやめるなんて自分にはできないのだけれど。
そんなこんな、また一つ不安の種が見つかってしまったってね。
うまくいくのかしらん。