夢の続きが見られる
そんなことを特技として挙げたことがある


続きをみたいと思わなくても
目が覚めてからすぐ眠れば続きが見られる


どんなに続きを見たくない夢でも
眠れば続きを見ることになるし
どんなに続きを見たい夢でも
眠れなければその続きを見ることはない




夢の中で
ただ一人だけ
昔の思い人が現れるというのは
何を意味するのだろう

思い人なんて言っても
何でもない関係だった
着かず離れずが少し続いただけ

飽きっぽくかつ幼い精神と、淡白かつ成熟した精神と
反するところに惹かれたのかもしれない

自分が描いていたその人の像は
孤独
一人でいるのを好んでいるかと思っていた

夢の中で見たその人も
やはり一人で座っていて
それを見つけた自分も
やはり一人で座っていて
その人は鳥に囲まれていて
突然鳥が飛びたったかと思えば
ふと気付くと近くにその人がいた
最初は誰かわからなかったのに
近くに来ることではっきりと認識した

二言三言交わした記憶はあるけれど
中身は覚えていなくて
続きを見たいと確かに思ったのに
そんな時に限ってもう眠れなくなっている

話すことに遠慮はなくて
懐かしいという感情すら生まれない
夢の中で繋がっていたらなんて
一瞬だけそんなことを考えてみた
現実では起こっていない会話の記憶が
現実に影響するような
そんなことがあれば面白いのに
一瞬だけ考えたけれど
夢の中での出来事なんて
ほぼ全てが自分の思い通りになって
そんなところで起こったことが現実に干渉したとして
何が面白いだろうか

その全ては
自分の想像妄想空想の中で生まれ
その中で終わる



続きをみたいと思ったのは確かだけれど
果たしてそれは未練か
それとも何を話すのかへの単なる興味か
未練の残るような関係であった記憶はないのだけれど
自分自身のことが自分で分からない


結局根の根の部分では自分がかわいいだけであり
全ては自分のまわりで回っていると感じているだけなんじゃないか

悲劇の主人公の気分で
実際は何でもない存在
存在すら認知されない存在
悲痛な気持ちで歌いながら湯に浸かれば
あがってしばらくしてからという謎の時間に倒れたり
過呼吸気味の体験は
それでも自分の体裁を気にしていたんじゃないだろうか


こうはなりたくない
こんなことを考える人間にはなりたくない
こんなことを思う人間にはなりたくない
こんなことをする人間にはなりたくない
そんなにたくさん作っているつもりはない像の
そのほぼ全てに気付けば該当している自分
この存在はなんだろうか
嫌悪の対象であるはずの像に該当する自分自身はしかしそれを一番に考えている
最早そのことすらその像に含まれるのに
と続く入れ子構造
マトリョーシカ



変わらない変えられない
こうなってしまったことを受け入れて
結局人に見せるのは作られた部分だけなのか
その疲労は重なりいつかは壊れ
結局全てを放棄して崩壊する
まだ一度しかないけれど
それでもこれからさきいくらでも起こりうる

結局初めから諦めてかかるのが一番じゃないだろうか
あぁなんて悲しい運命
なんて
主人公気取りの思考は止まらない
終わらない