ひつじが丘/三浦綾子

ひつじが丘 (講談社文庫)

ひつじが丘 (講談社文庫)

これまで多少は本を読んできたけれど、読みながら「この本は凄い」と思ったのは初めてかもしれない。
傑作って、こういう本のことを言うのかと、そんなことを考えるのもたぶん初めてだ。


良一、竹山の心の葛藤が描かれている部分が特に良いと思う。
「愛=ゆるす、ゆるしつづける」という図式が通っている所も良かった。
終盤、良一の行動を許せず函館を飛び出してきた奈緒美に、良一をゆるすよう諭した、奈緒美の父親の言葉がすごく印象に残った。

奈緒美。人間同士というものはね、憎み合うように生まれついているんだ。お互いをうらぎるようにできているんだな。どんな誠実な人間だって、心の底では幾度人をうらぎっているかわからない」(三浦綾子「ひつじが丘」p.223)