1シーン

いつの間にか寝ていたようだった。
まだボヤけた意識で身体を起こす。


手元には栞を挟まないまま閉じられた小説。窓は開けていたけれど、いつの間にか汗ばんでいた。


第一派には何とか耐えた記憶があるのだけれど、第二派は迎えた記憶すらない。
時計の針は12時を回っている。
熱い湯で身体を流し、湯船で疲れを癒す。
改めて寝るために汗を流そうとするそれだけで、目は覚めてしまう。
火照ったままベランダに出る。
雨が降った後とはまた違う、好きな空気の匂い。
昔は秋にしか感じられないかと思っていて、秋の匂いだと思っていた。
しかし実際は、秋でも、春でも、夏でも、冬でも、一年を通して感じることが出来ると気がついた。
秋の匂いではなくて、何の匂いなのだろうか。
青と緑の間、横文字がしっくりくるような色をした匂い。