ひとめあなたに・・・/新井素子

ひとめあなたに… (角川文庫)

ひとめあなたに… (角川文庫)

たまには違ったものも読んだらと進められて読んでみた。
冒頭からの語り口で、思わず出版された年を確認して、これが昭和か、と思った。別に、そういうわけでもないのだろうけれど。
とにかくどこまでも口語調。
やたらに三点リーダが使われていて、不安感というか、不安定感がよく現れているような気がする。
「うふっ」なんて使われている小説は初めて読んだかもしれない。とにかく語り口に強い印象があって、ふわふわした感じなんだけれど、でもその語り口で語られる内容が、それなりに凄惨だったりする。
そのギャップも味わうべきところなのかな。
読み始めてすぐにすごく違和感を感じたけれど、それでも結局最後まで読んでしまったし、それなりに面白かった。

犬はどこだ/米澤穂信

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこだ (創元推理文庫)

犬はどこなんでしょうねぇ。
やっぱり、相変わらず、米澤穂信は面白い。
訳アリで仕事を辞めて、犬探し専門のつもりで調査事務所を開業したのに、犬探しもしないうちに、二つも犬探しでない依頼が入ってきて、二人の所員が別々に調査していくうちに、読んでる側にはそのつながりが少しずつ明らかにされていって、最終的に一つ、になるわけでもないけれど、二つの依頼が実は切れない関係にあることが分かっていく。
最後の最後でどんでん返し、まさに

そして、それが嘘だと確信した瞬間、陰画は陽画に転化した。(米澤穂信「犬はどこだ」p.333)

の如く転化したと感じさせられたのは、ちょっと乗せられ過ぎだろうか。
意外な、そしてゾッとする結末。そして最後に残る不安感。
米澤穂信に共通しているように思うこの辺のところが好きなんだろうな。
解説でも指摘されてるけど、いろんな文体があるのも目新しく、面白いと思わせられる一面かもしれない。