夜の公園/川上弘美
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/04/01
- メディア: 文庫
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川上弘美の小説が好きなのか、「ひつじが丘後」にもかかわらず、面白く読めた。
ちゃんとその場所にいるはずなのに、そこにいないような気がする、そんな関係が描かれていた。
何も変わらず、今のままで死んでいくと思っていた矢先に突然変化が訪れた時、リリの考えたこと、
自分に合った扉を開けて。自分に合った靴をはいて。自分に合った香水をつけて。自分に合った夫をみつけて。自分に合ったローンを選んで。まちがいなくそうしてきたと思っていたのに。どうしてこういうことになってしまったんだろう。(川上弘美「夜の公園」p.119)
まだこの言葉の、半分も理解できていないのだろうけれど、それでも少しは、この言葉の表す気分というものが分かる気がする。
自分で選んでそこにいるはずなのに、何かが違うという感覚。
選んで、選んで、選ばなくて、そんなことを繰り返してたどり着いたはずなのに、ここに来たかったのではないと思ってしまう。
それは、選ばなかった未来への未練なのか、現状への不満なのか。
どうしても感じてしまうその気持ちを、どこへやればいいのだろう。
よくないと思うはまり方をして、どうしようもなく取った行動も、結局うまくいかなくて、そんな時に悟の思ったこと、言葉が、好きだったので、ちょっと覚えておこうと思う。
死ぬことも、生きることも、愛することも、愛さないでいることも、かんたんだな。悟は思う。でも、それらを容易に「かんたんだ」と思えるくらい、俺はきっと若いんだな。(川上弘美「夜の公園」p.219)