夜の公園/川上弘美

夜の公園 (中公文庫)

夜の公園 (中公文庫)

なんか最近恋愛小説ばっかり読んでる気がするんだけど、実感の伴わない読み恋愛というのは、すごくむなしいなって気がした。


川上弘美の小説が好きなのか、「ひつじが丘後」にもかかわらず、面白く読めた。
ちゃんとその場所にいるはずなのに、そこにいないような気がする、そんな関係が描かれていた。
何も変わらず、今のままで死んでいくと思っていた矢先に突然変化が訪れた時、リリの考えたこと、

自分に合った扉を開けて。自分に合った靴をはいて。自分に合った香水をつけて。自分に合った夫をみつけて。自分に合ったローンを選んで。まちがいなくそうしてきたと思っていたのに。どうしてこういうことになってしまったんだろう。(川上弘美「夜の公園」p.119)

まだこの言葉の、半分も理解できていないのだろうけれど、それでも少しは、この言葉の表す気分というものが分かる気がする。
自分で選んでそこにいるはずなのに、何かが違うという感覚。
選んで、選んで、選ばなくて、そんなことを繰り返してたどり着いたはずなのに、ここに来たかったのではないと思ってしまう。
それは、選ばなかった未来への未練なのか、現状への不満なのか。
どうしても感じてしまうその気持ちを、どこへやればいいのだろう。


よくないと思うはまり方をして、どうしようもなく取った行動も、結局うまくいかなくて、そんな時に悟の思ったこと、言葉が、好きだったので、ちょっと覚えておこうと思う。

死ぬことも、生きることも、愛することも、愛さないでいることも、かんたんだな。悟は思う。でも、それらを容易に「かんたんだ」と思えるくらい、俺はきっと若いんだな。(川上弘美「夜の公園」p.219)